質問
中小・零細企業に対する金融の円滑化を目的に、さまざまな施策が行われていますが、実際のところ、機能しているかどうかが疑問です。現状はどうなっているのでしょうか?教えてください。
回答
金融庁は、去る平成17年8月12日、17年5月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表を行いました。これは、17年3月末に公表された「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17年~18年度)」において示された「中小企業金融モニタリング」の更なる活用を図る一環として、その公表が盛り込まれたことによるものです。
「中小企業金融モニタリング」とは、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの一環として、商工会議所などの協力を得て、中小企業から見た金融機関に関する具体的な問題点について把握するために、四半期毎に実施しているものです。今回は171団体、390名からヒアリングを行っています。
今回実施された「中小企業金融モニタリング」では、主に以下のような質問項目で調査を行われました。
中小企業金融に関する最近の3ヶ月間の中小企業に対する貸出態度の動向を見ると、積極的になったが8%、やや積極的になったが23.5%と約3割強の金融機関の取組みが一定のレベルではありますが、評価されるようになってきました。地域別に見ると、北陸、近畿など、積極的、やや積極的といった意見が過半数を超えている地域が見られるようになっています。
一方、変わらないとする意見も57.4%と過半数を超えています。特に、やや消極的になったが5.2%、消極的になったが1.3%と少数ですが、金融機関の後ろ向きな姿勢を指摘する声も上がっています。
金融機関別で見ると、政府系金融機関は、創設の意義に相まって、ほぼ全体の割合に等しい意見となっています。主要行に関しては、積極的とも消極的ともいえず、以前と変わらないスタンスが見受けられます。最も地域密着型金融と関わりがある地方銀行、及び信用金庫・組合については、比較的積極的な姿勢が見受けられるようになってきました。「リレーションシップ・バンキング」が実践という形で、少しずつですが浸透してきていることが感じられます。
中小企業が金融面で直面する問題として、多数の意見が寄せられていますが、これを見ることで、中小企業が金融機関に対してどのように接していけばよいのかという、ヒントになりそうです。
融資体制に関連して寄せられた意見ですが、意外と貸渋り・貸剥がしといった事例は聞かれないものの、金融機関の企業選別はさらに強まっており、融資姿勢の二極化傾向が見られるようです。実際に、優良先に対しては訪問が増加し、必要外の資金提供を打診するケースもあるようです。一方、経営指導などが必要な先に対しては、疎遠になってきており、状況把握などが薄らいでいるようです。
担保・保証に関しては、さまざまで、無担保・無保証の融資や融資制度が増えてきていることに対する一定の評価はしつつも、審査はより厳しくなってきたとの意見もあります。また、地価下落による担保価値の下落や、保証能力の低下を指摘している部分が問題視されていることから見ても、金融機関のリスクの管理体制強化が伺えるところです。
経営指導・創業再生支援については、比較的厳しい意見が寄せられています。例えば、中小・零細企業の経営者は長期的展望を描ける状況になく、金融機関は経営指導にもっと力を入れてほしいという意見は、施策を行う営業店への本部からの浸透度合いも含めて、最も金融機関の現況を表していると思われます。この状況を踏まえた上で、われわれ会計事務所がその位置づけを確認し、中期経営計画の策定のサポートや、経営助言活動を日常業務として行うことが、企業存続・発展の足掛かりとなるのではないでしょうか。
また、中小・零細企業の再生支援に関しても、税理士事務所は、町医者的な立場にいるわけですから、常に財務的な健康状態を監視しつつ、時には外科的手術のような思い切った助言活動を行う必要があると思います。
融資の際の審査期間に関連する事項では、金融機関と保証協会と提携して販売を始めたスコアリングローンが審査期間の短期化で好評とされていますが、通常の融資では、申込み後の返答をなかなかせず、そのままの状態で引き伸ばすような傾向も見られるとあるように、優良先ではないところに対しては、審査の際に従前より慎重になっている面も窺い知ることができます。
金利については、優良貸出先に対する金融機関同士の融資競争は激化しており、金利は低下の傾向にある、といわれています。一方、比較的中小企業への資金供給は進んでいるものの、貸出金利が高いため、中小企業は借入れが難しい状態にあります。さらに、提示された利率についても借り手側がクレームをつけなければ、高い金利のままという状態で、あることからも、借り手側の企業は、客観的に自社を分析し、行動していかなければならない、ということがいえるでしょう。
借り手側に関する問題としては、今後返済財源の確保が難しい中で、借入れの抑制姿勢が強くなっていることが挙げられます。また、信憑性のない決算書、具体性のない事業計画、自己資金ゼロなど、事業者側の安易な姿勢も指摘されているのが事実です。
※上記の現状を踏まえ、会計事務所も企業の変化するニーズに応えていかなければいけませんね。