融資を引き出すための金融機関との上手な付合い方②「実践編」月刊『税理』連載コラム 2005年9月号

第9回 直接金融について考えてみる

 質問 

 最近、金融機関からの借入れが難しくなっています。直接金融による資金調達という言葉を目にしますが、中小・零細企業にとっても利用可能なのでしょうか?詳しく教えてください。

 回答 

 日本における企業の資金調達は、金融機関からの借入れが一般的で、特に中小・零細企業においては、ほとんど例外なく借入れによる資金調達により賄われていると思われます。しかしながら、近年の金融機関の不良債権処理など体質改善に伴う、貸渋り・貸剥がし、あるいは金利の引き上げなどが行われるようになり、金融機関からの借入れが容易ではなくなっているのが現状です。

 ここで言葉の整理をしてみたいと思います。企業の資金調達の方法としては、「直接金融」と「間接金融」に区分することができます。「直接金融」とは、資金を必要とする企業が株式や社債権などを発行して投資家から資金を集めることをいいます。すなわち、借り手の企業と貸し手(個人や企業)の間には、金融機関が介在せず直接取引となるため、このように呼ばれています。

 また、「間接金融」とは、銀行などの金融機関からの借入れによって資金を調達することをいいます。この場合、金融機関が預金として個人や企業から集めた資金を、金融機関の自己責任で、借り手の企業に貸し付けることになるため、当然ながら、借入れの金利は、預金者に対する金利よりも高い金利になり、その差額が金融機関の利益ということになります。いずれにしても、金融機関が介在することで、貸し手(預金者)から集めた資金を間接的に借り手の企業に貸し出しているため、このように呼ばれています。

 このような環境のもと、日本の金融システムについては、間接金融から直接金融へと移行することが課題となっています。政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」で、「預貯金中心の貯蓄優遇から株式・投資信託などの投資優遇への金融のあり方の転換を踏まえた直接金融への信頼向上のためのインフラ整備など、証券市場の構造改革を一層推進していく」ことを明言しています。これを踏まえて、金融庁は、平成14年8月に「証券市場の改革促進プログラム」を公表し、(1)誰もが投資しやすい市場の整備、(2)投資家の信頼が得られる市場の確立、(3)効率的で競争力のある市場の構築という3つの柱に沿って、具体的な施策を提示しています。

 ところで、会計人の立場から、「貸借対照表」を通して資金調達方法を見てみましょう。「貸借対照表」の構造を考えてみると、貸方(右側)は、資本(金)の調達源泉を表し、具体的には、「資本」、「負債」がこれに当たります。一方、借方(左側)は、その資本(金)運用形態を表し、「資産」がこれに相当します。通常であれば、中小・零細企業の資金調達方法としては、返済不要である「資本」の増加、すなわち資本金の増加の形が一番良いわけですが、株主と役員がほぼ同一である中小・零細企業にとって、気軽に社長が返済不要の資金を提供するような時代ではなくなっています。よって、金融機関からの借入金、すなわち「負債」よって資金調達を行なっているのが現状です。しかしながら、「間接金融」たる借入れが厳しくなっており、これ以外の方法である「直接金融」の方法を探るのが今回のテーマです。

 資金調達の手法には、「資産」、「負債」、「資本」の部による調達方法があり、それぞれ、「アセット・ファイナンス」、「デッド・ファイナンス」、「エクイティー・ファイナンス」と呼ばれています。ここでは、「直接金融」に限定して、その手法を解説します。

アセット・ファイナンス

 アセット・ファイナンスとは、貸借対照表の借方、すなわち「資産」にあたる項目を資金化する方法で、資産の流動化や証券化などが挙げられます。これは、資産自体の持つ信用力やキャッシュフローから生み出される能力が重要になってきます。これに該当する手法は、企業が保有する売掛債権(売掛金・受取手形)について、保証や売却することで資金調達する「ファクタリング」や、自社の固定資産をリース会社に売却し同時にその資産に対してリース取引を行ない資金調達をする「リースバック」、不要資産の売却などが挙げられます。

デッド・ファイナンス

 デッド・ファイナンスとは、貸借対照表の貸方のうち「負債」に当たる部分の資金調達方法で、返済の義務があり、それに見合う調達コストを払うのが特徴です。比較的手続きが簡単である「少人数私募債」による資金調達が注目されます。

 「私募債」とは、非公募債あるいは縁故債とも呼ばれており、証券会社を通じて広く募集する公募債とは異なり、50未満の購入者が直接引き受けることによって発行される社債をいいます。また、官庁などへの届出の必要もなく、手続きも比較的簡素です。さらには「私募債」は、一定の財務水準を持つ企業が発行している場合が多いので、対外的なアピールも期待することができます。

 最近では、銀行が引受金融機関と保証金融機関の2役を担うことにより、私募債に物的担保を保証せずに発行できる「銀行保証付き私募債」も登場し、ますます直接金融による調達が容易になってきています。

エクイティー・ファイナンス

 エクイティー・ファイナンスとは、貸借対照表の貸方のうち「資本」に当たる部分の資金調達方法で、第三者割当増資や新株引受権付き社債、また従業員持ち株株制度などが考えられます。

中小・零細企業の資金調達方法も時代の要請とともに、大きく変化しています。今後は、会社の将来性等を加味した資金調達方法が現れることが期待されます。