融資を引き出すための金融機関との上手な付合い方②「実践編」月刊『税理』連載コラム 2005年8月号

第8回 金利について考えてみる

 質問 

 金融機関からの借入金について、金利の引下げ交渉をしたいと考えています。そもそも金利の決定方法や仕組みがよく分かりません。特に金融機関の考え方を教えていただけると助かります。

 回答 

 融資の金利水準は、日本銀行が経済や金融の安定化を図るために調節する公定歩合の影響を受けることになります。しかしながら現在の金利は、金融市場の需要と供給のバランスによって反映するようになり、公定歩合の変動とは必ずしも一致しなくなっているのが実情です。

 一般に、金融機関から融資を受ける際の金利の水準は、プライムレートによって決定されています。プライムレートとは、金融機関が取引先の中でもっとも優遇する企業に対して、資金を貸し出す際の金利のことをいいます。また、期間が1年超か1年以下によって「長期」と「短期」に分けられます。

 長期プライムレートの金利は、各行が独自に決めていますが、みずほコーポレート銀行が発行する「みずほコーポレート銀行債券」の表面利率(0.55%)に0.9%上乗せした金利(1.45%)に設定されることが一般的なようです。(2005年6月10日適用分)

 また、短期プライムレートは、公定歩合に連動して設定されていましたが、金融の自由化に伴い不具合が生じたため、1989年に、より市場の実勢を反映した新短期プライムレートが登場しました。

 要するに企業への貸出金利は、これらのプライムレートを基準に、企業の取引規模・取引内容・業績などを勘案して、金融機関の儲けを上乗せした利率となります。借入れの際に年利として表現される利率のことを「表面金利」といいます。

 通常、企業は、この「表面金利」で融資を受けるわけですが、これに関するカラクリを知っておく必要があります。それは、「実効金利」と呼ばれるものです。

 しかしながら「実効金利」については、「実質金利」と「実効金利」を混同している場合が見受けられます。金融機関の方でも間違っているようですが、実は、企業にとっても金融機関にとっても、これを区別することは非常に大切と思われますので、ここで言葉の整理をしてみたいと思います。

 「実質金利」とは、どちらかというと経済学の用語で、名目金利(借入れ時の金利)から物価上昇率を差し引いたものをいいます。例えば、ある「モノ」の値段が10,000円で、それを金融機関から融資を受けて購入したとします。このときの金利が3%で、物価上昇率も年3%と仮定しましょう。使用による価値の下落がないとすると1年後には、その「モノ」の値段は、10,300円になっているはずです。また、金融機関に対する借入金も年利息300円が加算されて、10,300円となります。よって、実質的な金利負担は、ゼロというわけです。[3%(名目金利)-3%(物価上昇率)=0%]

 上記は、インフレの時期の例ですが、現在のようにデフレといわれている場合には、「モノ」の値段が下落しているわけですから、例えば物価が3%下落して、その値段は1年後に9,700円になっているはずです。しかしながら、借入金は10,300円のままですから、実質金利は6%に上昇していると考えなければいけません。[3%(名目金利)-(-3%)(実質金利)=6%]

 よって、デフレの時代には、たな卸資産などの回転率を上げること、すなわち商品の手離れを良くすることで、実質金利を減らすことが可能となります。言い換えると、商品を長く持ち続けることが実質的な金利負担になってくるということです。

 次に「実効金利」の定義は、本来同一でなければいけませんが、企業側と金融機関側で、多少異なっているのが現状です。一般的に企業側から見た「実効金利」とは、借入れの約定金利に保証料と融資手数料を勘案したものをいいます。すなわち、今回の借入れに対して、どれだけ費用負担しているかを金利ベースで敷き直したものをいいます。

 一方、金融機関側からみた「実効金利」は、貸し付けた資金の実質的な利率をいいますが、固定された預金と借入金の利息を勘案することが重要です。すなわち、企業の場合、金融機関の口座でお金が動いているのが通常であり、特に当座預金の場合は、貸越契約を結んでいる場合以外は、マイナス残は許されません。よって、利息がつかない余分なお金が入金されていることになります。また、本連載第6回(平成16年6月号)で解説した「拘束性預金」、いわゆる「歩積・両建預金」の存在が実効金利を把握する際に重要になってきます。

 例えば、ある企業が年利3%(表面金利)で1,000万円を借入れを行ったとします。ちなみに、この企業の当座預金の平均残高は500万円と仮定しましょう。年間支払利息は、30万円なのですが、本来500万円の当座預金があるわけですから、借入額は500万円でよかったはずです。これは、500万円の必要借入額に対して1,000万円分の金利負担をしていることを意味しています。

 金融機関から見た実効金利の計算は、下記の式のように6%なっています。
(貸出金利息-預金利息)÷(貸出金-預金)=(30万円-0)÷(1,000万円-500万円)=6%

 上記の例では、当座預金の平均残高を用いましたが、拘束性預金の場合でも、いまの預金金利はほぼゼロに近いため、分子の利息部分の金額はほとんど変化がありません。むしろ分母については、拘束性預金が多ければ多いほど、数値が小さくなってくるため、実質金利は上昇することになります。

 このように、金融機関は、取引先企業に対して個別の採算管理を行っており、単なる表面金利だけではなく、固定性預金や流動性預金の平均残高を加味して実効金利を計算していることを理解しなければいけません。

 この点を理解することで、金融機関に対して金利の引下げ交渉を行う際などに役立てていただきたいと思います。

「歩積・両建預金」は、金融庁の指導の下、禁止されていますが、実態は企業からの「自主預金」として続いているようです。これを解消しなければ、実質的な金利の引下げにはなりませんね。