質問
企業の金融手段の一つとして、ほとんどの企業でリースが活用されていますが、財務資金的な見地から、どのように捉えていくべきでしょうか?リース会社の形態やリース取引について教えてください。
回答
前月号までは、金融機関をいわゆる銀行等に限定してお話を進めてきましたが、リース会社も、中小・零細企業にとって頼りになる金融機関の一つといえます。企業の財務体質改善のためにもリース会社の利用は、欠かせない存在となってきています。
例えば、建設業などは、経営事項審査において評点アップを目的に、積極的に手持ちの固定資産をリース化しています。すなわち、新規取得資産、あるいはすでに使用している資産をリース取引にすることで資産項目を減額し、総資産(本)を圧縮しています。こうすることで、企業の安全性の指標たる自己資本比率が向上し、評点アップとなるわけです。
我々、税理士事務所は、リース取引に関して、昭和50年に国税庁から出された「リース取引に係る法人税及び所得税の取扱いについて」、及び昭和63年に出された「リース期間が法定耐用年数よりも長いリース取引に対する税務上の取扱いについて」に基づいて、顧問先の会計・税務処理の指導を行っているところであります。しかしながら、これは、事後処理的な問題であって、企業の設備資金調達手段としてリース取引の本質を理解することが必要です。一般に、開業直後や何らかの理由で、資金力が乏しいあるいは信用力が低い企業は、設備資金を借入金等で調達することが非常に難しいのが現状となっています。そこで、設備を「購入する」ことではなく、「使用する」ことが設備投資の本来の目的であることに着目し、新たな設備調達手段として誕生したのがリース取引です。
リース取引とは、一般の事務機器、工場設備などの動産を対象とする長期間にわたる賃貸借契約と定義されますが、通常「リース」というときには、ファイナンス・リースのことを指しています。ファイナンス・リースは、周知のとおり、設備資金を貸し付けるのではなく、設備そのものを賃貸する取引ですが、もともと設備調達手段の代替的手段として構築されているため、リース会社という金融機関が存在して、初めて成立する取引であることを、確認する必要があります。
リース会社は、大きく分けて、(1)大手家電・事務機器メーカーが母体のメーカー系、(2)都市銀行、地方銀行など銀行出資の銀行系、(3)大手商社が母体の商社系、及び(4)これらいずれにも属さないオリックスなどの独立系に分けることができます。クレジット分野からリース分野に参入してきたメーカー系については、リース会社が物件販売業者を代理店としてリース取扱契約を交わし、販売業者が物件販売時に提携先のリース会社の中から条件の良いリース会社をユーザーに紹介斡旋し、ユーザーは代理店経由でリース申込みをする形態となっています。どちらかというと、取扱いは事務機器が中心で比較的金額が小額のため、審査も通りやすく、その分料率は若干高めな感じがします。また、販売業者が複数のリース会社と提携している場合、リース会社それぞれで審査基準も異なるため、Aリース社では審査が通らなかったものの、Bリース社では通ったということもあるため、財務体質が脆弱な企業にとっては、有効かもしれません。
オリックスグループなどの独立系は、リース取引を初めとして、銀行と同様に融資業務や不動産関連ファイナンスも行っており、企業の資金調達を様々な形でバックアップしています。まさに金融のデパートといった感じですね。中小・零細企業にもそのノウハウが浸透することで、倒産企業が減るのではないかと密かに期待しています。
ところで、2003年度の民間の設備投資に占めるリース設備投資額の割合(リース比率)は、8.7%となっており、その額は65,917億円となっています。また、リース取扱高の機種別構成では、情報関連機器が35.9%と最も多く、そのうち約29%がコンピュータ関連と最大のシェアとなっていますが、税法改正の影響もあってか、ここ数年シェアはダウン傾向にあります。さらに商業用及びサービス業用機械設備、産業機械、輸送用機器の順となっており、これらの種別を含めて約75%を占めています。
リースのユーザー別構成のうち件数ベースでは、中小・零細企業が全体の6割を占めています。また、リース利用率は約91%で、10社のうち9社の企業が利用しているのが現状となっています。リース会社は、中小零細企業にとって最も身近な金融機関なのかもしれませんね。
リース取引を利用して設備を調達することで、銀行などの金融機関からの与信枠はそのまま残ることになります。結果として利用可能資金は、実質的に増加することになりますので、単に最終的なコスト高を懸念してリース取引を避けるべきではないですね。
※関与先から「購入とリースのどちらが良いか」といった質問が来ますが、資金的に余裕があり、自己管理能力のある企業については、もちろん購入とお答えしています。でも、環境の経済に伴い、こうお答えするケースも非常に少なくなりましたね。