質問
「金融改革プログラム」によると、活力ある金融システムの創造のため、不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達方法の充実が、具体的施策として挙げられています。実際に、金融機関との取引の際には、不動産担保・保証などが障害になって、融資が受けられないことがあります。金融機関による不動産担保・保証の考え方や評価・設定について教えてください。
回答
金融機関が担保として見る場合、貸金の回収を前提として考えているわけですから、処分価格を前提として考えていることになります。したがって、金融機関の担保評価額は、実際の物件価値よりも低くなっています。
担保物権の評価が行われた場合、その評価額の100%に見合う額の融資が行われるかというと、実はそうではありません。さらに、担保の種類によって「掛け目」を考慮するため、実際の評価額よりも少なくなっているのが、現状です。
中小企業金融公庫は、「掛け目」について民間金融機関より比較的高めの設定をしているようです。政府系金融機関ということから政策的な配慮で、優遇されているものと思われます。特に設備資金などの長期資金が必要な場合には、積極的に利用することをお勧めします。
金融機関からの借入れに際して不動産担保の設定を行う場合、抵当権あるいは根抵当権といった種類と担保設定金額が問題となります。金融機関の主導で担保設定を行うと、どうしても金融機関にとって有利な内容となることは、間違いありません。顧問先を守るためにも、基本的な仕組みを理解する事が必要です。また、これらについては、税理士事務所の職員さんや所長先生でも詳しく理解されていないということを金融機関から聞いておりますので、簡単に解説します。
金融機関の担当者から、「根抵当権を設定して、繰返し借入れを行える態勢でいると便利ですよ。」と言われたときには、どのように対応すべきでしょうか?
設備資金などの長期資金を借入れる際の抵当権の設定は、仕方ないと思われます。しかしながら、根抵当権を設定し、今後の短期資金に対応することは、いかがなものでしょう。金融機関の観点からすると、担保・保証といった保全の命題が課せられているため、それを要求するのは当然のことです。しかしながら、短期資金ぐらいは、無担保で調達できるぐらいの信頼関係を金融機関と日頃から構築できなければ、本来の営業活動も積極的に推し進められないのではないでしょうか。
このような意味で、中小・零細企業の永続的発展のために、「金融改革プログラム」に掲げられている不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達方法が、早く具体的に明示され、実践されることを期待しています。
※担保が設定されている状況は、意外と理解されていない企業が多く見受けられます。顧問先に伺う際に、登記簿を確認されることをお勧めします。