融資を引き出すための金融機関との上手な付合い方②「実践編」月刊『税理』連載コラム 2005年5月号

第5回 金融機関は不動産担保・保証をこう見る!

 質問 

 「金融改革プログラム」によると、活力ある金融システムの創造のため、不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達方法の充実が、具体的施策として挙げられています。実際に、金融機関との取引の際には、不動産担保・保証などが障害になって、融資が受けられないことがあります。金融機関による不動産担保・保証の考え方や評価・設定について教えてください。

 回答 

担保物権評価

 金融機関が担保として見る場合、貸金の回収を前提として考えているわけですから、処分価格を前提として考えていることになります。したがって、金融機関の担保評価額は、実際の物件価値よりも低くなっています。

 担保物権の評価が行われた場合、その評価額の100%に見合う額の融資が行われるかというと、実はそうではありません。さらに、担保の種類によって「掛け目」を考慮するため、実際の評価額よりも少なくなっているのが、現状です。

 中小企業金融公庫は、「掛け目」について民間金融機関より比較的高めの設定をしているようです。政府系金融機関ということから政策的な配慮で、優遇されているものと思われます。特に設備資金などの長期資金が必要な場合には、積極的に利用することをお勧めします。

不動産担保の設定

 金融機関からの借入れに際して不動産担保の設定を行う場合、抵当権あるいは根抵当権といった種類と担保設定金額が問題となります。金融機関の主導で担保設定を行うと、どうしても金融機関にとって有利な内容となることは、間違いありません。顧問先を守るためにも、基本的な仕組みを理解する事が必要です。また、これらについては、税理士事務所の職員さんや所長先生でも詳しく理解されていないということを金融機関から聞いておりますので、簡単に解説します。

  1. 抵当権
     今回の借入れに限って担保する場合は、抵当権の設定手続きを行います。したがって、借入額が完済すると抵当権が消滅することになります。抵当権は、該当する借入れだけしか担保しませんので、借入れのつど手続きが必要になります。
     また、抵当権を設定する場合には、登記簿に記載しなければいけません。完済後、抹消登記を行わないとそのままの形で残ってしまうので注意が必要です。さらには、登記する際の設定費用にも気をつけましょう。

  2. 根抵当権
     根抵当権は、今回の借入れのみならず、今後の借入れに対しても担保していく場合に、極度額(限度額)を設けて、その範囲内ならば繰り返し利用できるものです。融資のたびに抵当権を設定する必要がないので便利ですが、その金融機関からの借入れが全てなくならないと、根抵当権を外すことはできません。
     例えば、根抵当権を設定し、設備資金などを長期借入れで行います。その後も根抵当権の範囲内で運転資金などの短期借入れを行っている場合には、長期借入れが完済したとしても、短期借入金を返済しない限り、根抵当権を外すことはできません。
     金融機関としては、企業に何度も担保設定をお願いする必要も無く、また、極度額の範囲内ならば比較的融資を行いやすいので、根抵当権を設定しているケースが多く見受けられます。
     財務体質改善のため、土地などの資産を処分し資金の流動化する際には、根抵当権の設定が足かせになって実施できない場合もありますので、注意する必要があります。

  3. 担保設定金額
     担保設定金額は、抵当権の場合、実際の借入額と同額になりますが、根抵当権を設定する場合には、実際の借入額より多く設定されることが見受けられます。不動産の価格が上昇している時代は、担保設定額を極度額として考えられたのですが、現在では、担保割れのため、担保設定した金額範囲で自由に借入れできる状況ではなくなっています。

担保に対する取組み

 金融機関の担当者から、「根抵当権を設定して、繰返し借入れを行える態勢でいると便利ですよ。」と言われたときには、どのように対応すべきでしょうか?

 設備資金などの長期資金を借入れる際の抵当権の設定は、仕方ないと思われます。しかしながら、根抵当権を設定し、今後の短期資金に対応することは、いかがなものでしょう。金融機関の観点からすると、担保・保証といった保全の命題が課せられているため、それを要求するのは当然のことです。しかしながら、短期資金ぐらいは、無担保で調達できるぐらいの信頼関係を金融機関と日頃から構築できなければ、本来の営業活動も積極的に推し進められないのではないでしょうか。

 このような意味で、中小・零細企業の永続的発展のために、「金融改革プログラム」に掲げられている不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達方法が、早く具体的に明示され、実践されることを期待しています。

担保が設定されている状況は、意外と理解されていない企業が多く見受けられます。顧問先に伺う際に、登記簿を確認されることをお勧めします。