融資を引き出すための金融機関との上手な付合い方① 月刊『税理』連載コラム 2004年12月号

第12回 民間金融機関の「制度融資」について

 質問 

 前回の内容から、中小企業の金融の円滑化を支援するために、「国」すなわち国民生活金融公庫などの政府系金融機関がその役割を担っていることが理解できました。それでは、民間金融機関で、事業規模の拡大や経営の安定化に向けるための必要な資金を、プロパー融資より低利で受けることは可能でしょうか?

 回答 

 都道府県や市町村などの地方自治体には、中小企業向けの各種の融資制度が用意されています。このような融資制度を(狭義の)「制度融資」と呼んでいます。広い意味での「制度融資」には、本連載第11回(11月号)で取り上げた様に、国民生活金融公庫や中小企業金融公庫などの全額政府出資の政府系金融機関が行なっている各種の施策に応じた融資制度も含まれます。これらの政府系金融機関の創設の目的には「一般の金融機関からその融通を受けることを困難な」企業を対象にしていることからも、「国」が中小企業をバックアップしているとも言えるでしょう。当然の事ながら、これらの「制度融資」の借入利息等については、民間金融機関のプロパー融資よりも低利になっているのが特徴です。

 「制度融資」とは、地方自治体と指定金融機関と信用保証協会の三者が協調して、中小企業が金融機関から融資を受けやすくするための制度をいいます。地方自治体は、融資に必要な資金の一部「呼び水」として金融機関に預託します。取り扱い金融機関はその資金に自己資金を加えて、地方自治体が定めた融資条件にしたがって、それぞれの金融機関の判断で融資を実行します。

 つまり、地方自治体は融資の申込者が対象者として最低条件に合致し、融資条件にあった申込みであるかを判断する役割になっています。一方、融資のための調査や審査は、取り扱い金融機関が行なうため、最終的な融資決定の判断は金融機関に委ねられる事になっています。

 一般に、中小企業が「制度融資」を活用する場合には、設備投資などに絡んでメインあるいは、サブメインの民間金融機関に相談することが多いと思われます。事前に商工会議所・商工会やインターネットなどで、「制度融資」の情報を入手しておき、該当すると思われる制度を提示したほうが、スムーズな展開となるでしょう。

 民間金融機関より中小企業に対する制度融資が行なわれる場合、その三者の役割は、次のようになっています。

 都道府県や市町村などの地方自治体は、(1)制度融資のために必要とされる原資を預託金として、金融機関に預け、(2)その融資に対して条件を定めます。(3)また、信用保証料の軽減措置等を実施しています。

 指定金融機関としてあげられている取り扱い金融機関においては、(1)地方自治体からの預託金に金融機関の自己資金を加えて融資を行ないますが、(2)申込みのあった中小企業ごとに審査を行ない、それぞれの金融機関の判断によって、地方自治体の定めた条件により融資を行ないます。

 さらに各地の信用保証協会では、(1)金融機関から事業資金を借り入れる際に公的な保証人の役割となり、借り入れを容易にしますが、(2)金融機関を通じて保証申込みのあった中小企業ごとに保証審査を行い、保証の諾否を決定しているのが実情です。

 ここで東京都の場合を例にとって、「制度融資」の概要を説明します。

 利用できる企業の条件として、(1)中小企業であること、(2)都内に営業の本拠があり、同一場所で同一事業を営んでいること、(3)法人あるいは所得税、および事業税を滞納していないこと、(4)東京都信用保証協会の保証対象となる業種を営んでいることなどがあげられます。

 (1)の中小事業者の範囲は、資本金または従業員数いずれか一方を満たす会社・個人、事業協同組合となっております。

業種 資本金 従業員数
製造業等(ソフトウェア業・情報処理業を含む) 3億円以下 300人以下(※1)
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下(※2)
医療法人(※3) 条件なし 300人以下

※1 ゴム製品製造業は900人以下
※2 旅館業は200人以下
※3 医療法人及び医業を主たる事業とする社会福祉法人、財団法人又は社団法人

通常、東京都の制度融資を申し込む場合は、東京都にある銀行、信用金庫、信用組合などの「取扱指定金融機関」が窓口となります。すでに金融取引や制度融資の利用実績のある方については、それらの金融機関の融資窓口へ相談することになります。

 ただし、新規に開業する方の場合には、直接民間金融機関の窓口に出向いても、信用力の判断など難しい問題がありますので、東京都産業労働局金融部金融課や東京商工会議所、あるいは東京信用保証協会などのあっせん窓口で相談の上、申込みをしたほうがほうが良いでしょう。

 東京都の場合、「小規模事業者向け融資」、「個人事業者向けの無担保無保証人融資」、いろいろな用途に利用できる一般的な事業資金の「自律経営融資」、創業前後の方向けの「創業支援融資」、新製品開発や事業多角化などさまざまな取組みを支援する「チャレンジ支援融資」、売上減少・取引先企業の倒産等に対応する「経営支援融資」など、多数の制度融資が用意されていますので、目的に応じて選択することが可能です。

制度融資を利用する場合でも、自社の財政状態・経営成績については、常に最新のものを用意するばかりではなく、経営者自らがその内容を理解していなければいけません。会計数値などの現状の把握が、経営意思決定の基盤となっていることをもう一度見つめなおしてはいかがでしょうか?