質問
新規に事業を始めようと思い、近くの金融機関(信用金庫)に開業資金の借入れの相談に行きましたが、事業の実績がないという理由で、全く相手にしてもらえませんでした。ただし、その金融機関の担当者から、政府系金融機関に行ってみてはどうかとアドバイスを受けたのですが、どういうことなのでしょうか?
回答
金融機関は、役割によって中央銀行、民間金融機関、政府系金融機関の三つに分類することができます。中央銀行とは、日本においては日本銀行がこれにあたり、発券銀行、銀行の銀行、政府の銀行という三つの役割を担っています。これらの役割をもとに、公定歩合操作・公開市場操作などの金融政策を実行することができるようになっています。
そして、民間金融機関とは、通常皆さんが「銀行」と呼ぶリテール・バンク業務を行っている都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合や、信託銀行、農林漁業金融機関、保険会社などがこれに当たります。
さらに民間金融機関を補完する機関として政府系金融機関があります。政府系金融機関には、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央公庫などがあり、民間の厳しい融資条件はクリアできない事業者や、事業に必要な資金の一部しか借りられない事業者など、資金調達に困難な人でも融資に応じてもらえる可能性があります。
政府系金融機関が行う公的融資と銀行などの民間融資とを比較した場合、公的融資の方は、(1)低金利である、(2)固定金利であるため資金計画が立てやすい、(3)比較的長期返済である、(4)担保・保証人の要件が軽い---といったメリットがあります。
しかし、公的融資は、銀行などの民間融資に比べて、(1)融資の決定までに時間がかかり、(2)必要書類が多く手続きが煩雑であり、(3)緊急の資金手当には、ほとんど対応できない---といったデメリットがあります。
国民生活金融公庫は、平成11年に国民公庫と環境衛生金融公庫が統合し、両公庫の業務を引き継ぎ発足した全額政府出資の政府系金融機関です。わが国には、中小企業が約469万社ありますが、公庫の事業資金の融資先数は、約149万社となっており3社のうち1社が利用していることなります。
国民生活金融公庫の融資は、すでに事業を営んでいる中小企業の方やこれから事業を始めようとする方で、金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業などの業種の方を除いて、ほとんどすべての業種の方が利用することができます。また、すでに公庫資金を利用して返済の途中の方でも、融資限度額の範囲内であれば、重複利用も可能となっています。ただし、原則として、保証人、担保(不動産、有価証券)などが必要となってきますので注意が必要です。
実際のところ、資金が必要な方で、保証人あるいは担保がないために銀行から融資を断られたケースが多いと思われます。本連載第1回(1月号)で取り上げたように、金融機関を取り巻く環境の変化に伴い、民間金融機関がプロパー融資を行うと金融機関の自己資本比率が低下してしまうため、自己資本比率低下の影響を受けない保証協会付きの融資を積極的に進めているからです。
小規模事業者や新規開業予定者で運転資金や設備資金の融資が必要にもかかわらず、十分な担保や適切な保証人がいない場合、無担保・無保証人で利用できる融資制度が経営改善貸付け(マル経融資)です。商工会議所・商工会等が国民生活金融公庫に事業者を推薦するという形で、いわば商工会議所・商工会等が保証人のような役割をはたしており、会員への融資をバックアップする制度です。
マル経融資は、一定の要件を満たす従業員が20人以内(商業・サービス業の場合は5人以内)の方が対象で、融資金額は550万以内ですが、別枠として450万円までの、最大1,000万円の融資を受けることが可能です。運転資金の場合は5年以内、設備資金の場合は7年以内の返済期間となり、ともにこの範囲内で最大6ヶ月まで返済の据置期間を設けることも可能です。
新規開業予定者や開業後税務申告を2期終えていない方には、新創業融資制度(新規開業ローンの保証人特例措置)により無担保・無保証人で融資を受けることが可能です。融資金額は、750万円以内となっています。返済期間は、上記と同様です。
その他、経済対策によるセーフティネット融資制度、新規企業育成貸付や経営革新等貸付など、さまざまな状況に応じた融資制度が用意されております。
中小企業金融公庫は、対象業種によっても異なりますが、国民生活金融公庫と比べてどららかというと中堅規模以上の企業に対して融資を行う政府系金融機関です。
製造業・建設業・運輸業 | 資本金3億円以下または従業員300人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または従業員100人以下 |
小売業 | 資本金5千万円以下または従業員50人以下 |
サービス業 | 資本金5千万円以下または従業員100人以下 |
一般貸付けの他、特別貸付けには、新企業育成貸付け、経営革新等支援貸付け、地域企業支援貸付け、環境対策貸付け、セーフティネット貸付けや企業再生貸付けなど、計画内容に応じて、さまざまな種類が用意されています。最長20年の長期で返済計画を組むことも可能となっています。
※政府系金融機関については、返済の事実が実績として評価されるようです。新規事業に限らず、今までの既存の民間金融機関から資金を調達している事業者でも、実績を残す意味で、政府系金融機関からの調達もご検討されてはいかがでしょうか。
詳しくは、国民生活金融公庫ホームページにてご確認ください。