金融検査マニュアルが公表されて以来3年が経過し、それに基づく金融庁の検査が行われてきました。しかしながら、金融検査マニュアルが機械的・画一的ものであるため、中小・零細企業などの債務者区分が抽象的でわかりにくく、それらの企業の経営実態を反映していないとの声もありました。
このような中、政府は、経営実態に応じた検査の運用確保策のひとつとして、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、具体的な運用例を作成することになりました。現段階では、「案」ですが、今後パブリックコメントを受け、本年6月以降の検査から適用する予定です。
主な内容は以下のとおりです。
貸借対照表の負債の部に、「役員借入金」勘定がある場合、役員が返済の要求をしない場合には、自己資本相当額として取り扱う。また、「役員貸付金」勘定がある場合、回収可能性を検討し回収不能額がある場合には、自己資本額相当額から減額する。ただし、代表者の個人支出や資金繰りの状況などを確認する。
多額の「役員報酬」や「支払家賃」勘定により赤字になっている場合には、赤字の理由による債務者区分を行わず、赤字の要因や金融機関への返済状況、返済原資について確認する。
企業に返済能力がない場合、代表者などの個人資産を企業に提供する意思がある場合、それらを勘案する。ただし、代表者個人の借入金、第三者保証債務がないかを確認する。
技術力を保有し、今後これにより業績の改善が予想される場合には、これを勘案する。
販売基盤が強固で、今後これにより業績の改善が予想される場合には、これを勘案する。
健康上の理由や一時的な理由により業績が低迷しているが、代表者などの経営者個人の信用力や経営資質が非常に高く、今後、業績の改善が予想される場合には、これを勘案する。
新規設備資金や改築資金が多い業種(例:温泉旅館業)については、現時点の収支や財務体質のみならず、赤字の要因、投資計画による収支の見込みなどの推移を勘案する。
経営改善計画書がない場合であっても、これに代えて今後の資産売却や収支見込などを基に返済能力を確認する。
設備投資資金を融資する場合、短期資金で融資し、これを後に長期資金に切り替えるものなど、通常の商習慣の中での条件変更もある。これを条件変更による債務者区分の変更を行わず、資金使途、変更理由を勘案する。