金融機関の破綻に伴う取付け騒ぎや連鎖倒産などを防ぐために、金融機関が預金保険機構に積み立てた保険料等で、破綻した金融機関の預金者等に保険金として元本1,000万円とその利息額を保険金として直接支払うことを「ペイオフ」と言う。但し、預金保険制度発足以来、ペイオフが発動されたことが無い。
現在は公的資金により金融機関が破綻した場合でも全ての預金及び利息が保護されているが、この「預金等全額保護の特例措置」が平成14年3月末に終了することを「ペイオフ解禁」と言っている。
ペイオフ解禁後に金融機関破綻した場合は
があるが、「保険金支払い方式(ペイオフ)」は健全な貸出先への影響等の混乱が大きいことから、企業や個人の決済を止めないために「資金援助方式」により破綻金融機関の営業を救済金融機関に引き継ぐ(P&A=資産と負債の承継方式)ことが優先される見通しであるが、営業の引き継ぎが困難でペイオフ発動もありうる。
尚、「資金援助方式」でも元本1,000万円とその利息額が最低保証であるのは同じ(預金全額が承継する金融機関に受け継がれる訳では無い)。
預金者の概念(金融機関の名寄せ状況に注意)
対象となる金融商品選定の背景は、金融審議会が次の条件を基本的考え方としたことによる。
金融機関破綻時の預金支払いについては預金者の名寄せ等の問題が有り、日数が掛かる見込み。資金援助方式による「金-月処理」(金曜日破綻、翌月曜日窓口での預金引き出し)が理想とされているが、実際に可能かは不明。
最低保障の部分については、引き続き譲受金融機関と取引が継続される。譲受金融機関への譲渡に時間が掛かる場合でも名寄せが済めば、破綻金融機関から支払いを受けることが出来る。預金保険機構が受け皿銀行に資金援助するのは1預金者当たり元本1,000万円とその利息の払い戻し必要額のみであり、預金者が引出可能であるのも同じ。
預金の受入・払戻、貸付、決済サービス等は継続される。
保険金(預金)の払い戻しに際しては、預金者側は選ぶことができません。
預金者は保険金支払い請求前に破綻金融機関の管財人に対して預金と借入金の相殺の申し立てを行う必要があるので注意が必要。相殺されると生活資金がなくなる等で相殺をしたくなければ、申し立てをしなければ良い。
金融機関破綻時に期限が到来していない預金(定期預金等)は法律上相殺が出来ない懸念がある。多くの金融機関では「預金規定」等を改訂して「保険事故発生時における預金者からの相殺」を規定し、預金保険法に定める保険事故が生じた場合にはその満期日が未到来でも借入金との相殺が可能であることを明記している。但し、全ての金融機関で預金規定対応がされていないので、疑念があれば預金規定の確認が必要。
尚、相殺禁止特約等で相殺できない場合もある。
(回答例)
具体的な金融機関名は回答できない。チェックポイントを挙げると
しかし、一般預金者にとって金融機関の分析は容易ではない上に、最近では保険会社の突然の破綻、MMFの額面割れ等プロにも予測できないケースもある確実な回答は出来ない。
1預金者1金融機関当たり元本1,000万円とその利息額が最低保障されており、相対的に安全な金融機関を中心に預金を分散するのが最善。なお、平成15年3月末まで全額保護されている当座預金・普通預金・別段預金に移せば、検討時間の余裕はある。
但し、大口預金者で1,000万円単位で分けると管理不能となる場合は、相対的に安全な複数の金融機関に集中するか、銀行預金以外に分散投資するかが現実的な解決策。
分散投資(含む不動産)にはそれぞれのリスクが伴う。例えば預金類似商品として元本確保が期待されていたMMFは元本リスクがあったし、国債も満期日以前の売却は額面割れリスクがある。金融機関破綻リスクと対象商品のリスクを比較しなければならない。
(回答例)
法人の場合は借入金が預金より多い場合は、相殺ができれば直接の被害は免れる。
できれば金融機関を刺激せずに、事前に当該金融機関の預金規定等にて相殺可能であることを確認するのがベター。
但し、相殺により預金・借入金共になくなり、運転資金に支障がでるのは防げない。相殺を実施した場合、借入金が預金を上回る場合、ケースによっては借入金の全額返済が求められることもありうる。
一方で経営者及び家族の個人預金(1個人当たり1,000万円超)を、実質的に金融機関が取引の一環としていた場合は、他の金融機関にシフトするのは難しいケースがある。
(回答例)
1預金者1金融機関当たり元本1,000万円とその利息額が最低保証されており、贈与税の問題はあるものの、家族名義に分散することは可能。しかし、「他人名義預金」は保険対象外とされており、保険金支払いの請求は預金名義人本人が本人確認資料を提出して行うことが前提になっている(本人が請求できない場合の対応方法は未定)。
尚、保険事故が発生した場合には預金者等(本人の預金として)が公告で定められた支払い期間内に定められた支払方法に基づいて保険金支払いの請求をする。
(回答例)
取引している金融機関の預金規程を確認すれば相殺可能かは確認できる(相殺禁止特約等で相殺できない場合もある)。
但し、債務者預金(法人が借りていれば法人の預金と担保に差し入れている預金)は相殺の対象になりうるが、家族の個人預金等は相殺が困難です。
また、相殺により預金・借入金共になくなり、生活資金・運転資金に支障がでるのは防げない。借入金が預金を上回る場合の相殺には注意が必要です。
なお、現時点では、ペイオフ後の事務手続きについて詰まっていない部分もあり、今後実例に則して決まっていくと予想される。