これからの金融機関とのつきあい方(後編)

 前回は、今置かれている金融機関の立場を解説し、それに伴う「貸し渋り」のカラクリを見ました。また、「貸借対照表」が企業評価の上で重要な会計情報であることを確認し、その構造とその中の指標である「自己資本比率」が安全性という側面から特に重要であることも解説しました。

 後編では、上記のような環境下で各企業がこれからできる対処法を解説します。

これからできる対処法

 金融機関を取り巻く環境の変化から、各企業は今まで以上に、金融機関との付き合い方を上手に進めなければいけません。もっとも気をつけなければいけないのが「粉飾決算」です。ここで粉飾決算の意味を確認してみましょう。

粉飾決算:赤字の企業が利益を出したように決算をおこなうこと
逆粉飾決算:黒字の企業が利益を減らした決算をおこなうこと

「粉飾決算」は、もともと赤字の会社が第三者から決算書の提出を求められているなどの理由により、やむを得ず黒字の決算を行うことをいいます。いったん、このような決算書を作成すると、なかなか本来の財政状態に戻すことはできません。金融機関サイドからみても、何らかの理由があれば、2期連続の赤字であっても許されるはずです。

「逆粉飾決算」は、売上の除外、あるいは費用の水増しによって行われますが、明らかに脱税行為です。また、税引き後の利益が剰余金として貸借対照表に計上され、自己資本比率のアップの要因となるはずなのに、利益を過少申告することで、その比率の上昇を自ら抑えているわけですから、実にもったいない話です。

 いずれにしても、このような公正妥当でない決算書からは、経営意思決定に役立つような会計情報は得られません。また、税務署用、銀行用、会社用といった複数の決算書がある場合でも同様です。金融機関は、借入れの際に、保証協会、信用調査会社などから複数の情報を入手します。仮に、それぞれの決算書の数字が異なっていたとするならば、その時点で、融資は行われないと思ってください。

 金融機関は、融資を行っている企業に対し、毎期の決算書の提出を求めてきます。以前であれば、貸借対照表・損益計算書だけでよかったのですが、税務申告書の提出も合わせて求められるようになってきました。理由は、税務署の受付印が押されていることで、真実性を確保するためです。

 ここで、前回お話しましたが、もう一度決算書について考えてみましょう。「損益計算書」とは、法人の1会計期間の経営成績を明らかにするもので、また、「貸借対照表」とは、法人の会計期末の財政状態を明らかにするものをいい、具体的には資金の調達源泉とその運用形態が表示されています。現在、各金融機関が注目しているのは、「貸借対照表」で、特に自己資本比率などの法人の安全性を表す指標に関心を持っています。その「貸借対照表」の中に、「役員借入金」あるいは「役員貸付金」といった科目がでてくることがあります。

「役員借入金」とは、法人の役員(一般的には法人のオーナーである社長)がその法人に対して一時的に資金を注入した時に、その金額を表示する科目です。これとは反対に「役員貸付金」とは、法人の役員がその法人の資金を持ち出した時に、その金額を表示する科目です。

「法人」とは、法律によって人格を与えられた会社などをいいますが、「法人」を「愛人」と読み替えると、上記の「役員借入金」「役員貸付金」の理解を深めることができます。「役員借入金」は、社長が「法人」に資金をつぎ込んでいる状態です。すなわ「法人」=「愛人」には、どんどん私財を投入できますが、いざ資金が必要になっても、それを返してくれとは、なかなか言えないものです。これは、「愛人」(法人)を愛しているからこそできるわけで、結果的に「役員借入金」の金額は、ほとんど減少することはありません。よって、実質的には、法人に維持拘束される資本金と同様に取り扱われることになります。また「役員貸付金」の場合は、社長「法人」=「愛人」の資金を引き出している状態です。すなわち、「愛人」が社長に対して、資金を渡している訳で、いわゆる『ヒモ』の状態です。「愛人」と社長の関係は、密接なのは間違いありませんが、社長は貢いでもらっている以上、発言力も弱いですし、また「愛人」の生活状況も苦しくなる一方です。また、「役員貸付金」が「仮払金」となっていても科目が異なるだけで内容は、変わりません。いずれにしても、ヒモの状態はお互いにジリ貧になるのは明らかですし、いったん貰ったものを返すのはとても辛いものなので、早めに手を打っておかないと、「心中」(倒産)なんてことになりかねません。

 その他に、これからできる対処法としては、

  • 役員賞与の支払い
  • 減価償却費を見込んだ利益管理
  • 徹底した計数管理と「赤字」の排除
  • 定期預金・積金を利用した消費税等の納税資金づくり

などが挙げられます。