経営事項審査制度の改正について

 国や地方公共団体などの入札に参加する建設業者の「格付け」である「経営事項審査」が時代の要請とともに大きく変化しました。

 平成11年7月の改正では、経営状況分析の見直しを中心に行われました。これは、過去の指標が制定された昭和63年当時とは、建設業界を取り巻く環境が大きく異なっていること、経営状況分析の評点が平均点を上回っていた建設業者でも倒産したことなどが問題となり、建設業者の経営状況が経営状況分析の評点により一層的確に反映されるようにしていくために行われたものです。

 それでは、「経営事項審査」制度の概要からみてみましょう。

審査事項について

 この「経営事項審査」では、以下の項目について客観的な審査がおこなわれます。

1.経営規模その1(X1)

  1. 工事種類別平均完成工事高(売上高)実績

2.経営規模その2(X2)

  1. 自己資本額
  2. 職員数

3.経営状況分析(Y)

は平成11年7月に改正された指標

  1. 売上高営業利益率 
  2. 総資本経常利益率
  3. キャッシュフロー対売上高比率 
  4. 必要運転資金月商倍率 
  5. 立替工事高比率 
  6. 受取勘定月商倍率 
  7. 有利子負債月商倍率 
  8. 純支払利息比率 
  9. 自己資本比率
  10. 自己資本対固定資産比率
  11. 長期固定適合比率 
  12. 付加価値対固定資産比率 

4.技術力(Z)

  1. 工事種類別技術職員数

5.その他(W)…社会性など

  1. 労働福祉の状況
  2. 工事の安全成績
  3. 営業年数
  4. 建設業経理事務士等の数

審査項目のウエイトと総合評点

 「経営事項審査」の総合評点(P)は、上記の5つの項目について、一定のウエイト付けを行い、算出します。

 総合評点(P)=0.35X1+0.1X2+0.2Y+0.2Z+0.15W

 完成工事高(X1)、経営状況(Y)および技術力(Z)の合計で全体の75%のウエイトを占めており、特にこれらの内容が重要であることがお分かりいただけると思います。

 各項目の評点の算出方法は、紙面の都合上割愛しますが、前回の平成10年7月改正で、リストラ推進による評点の激変緩和措置が設けられましたので、ご紹介いたします。

  1. 完成工事高の評点(X1)について、直前2年の平均完成工事高か直前3年の平均完成工事高を選択できるようになった。
  2. 技術力(Z)について、基準日現在の技術職員数か直前2年の営業年度末の平均技術職員数を選択できるようになった。
  3. 自己資本額、職員数の評点(X2)についても、基準日現在あるいは直前2年の営業年度末の平均を選択できるようになった。

経営状況分析の見直し

 平成11年7月の改正では、上記の数を見てもわかるように、経営状況分析を中心に大幅な見直しがおこなわれました。

 主な変更点をあげてみると、

  1. 収益性に関して、従来は「経常利益」を利益の指標として見ていましたが、企業の収益性の度合いをさまざまな観点から見るために、「営業利益」、「経常利益」及び「キャッシュフロー」を採用することになりました。
  2. 安定性に関して、有利子負債の状況を反映させた「有利子負債月商倍率」と売上高に対して、実質負担金利がどのくらい占めているかを示す「純支払利息比率」が新たに採用されました。
  3. 生産性に関する従来の3指標について、建設業の実情が的確に反映されていないと考えられるため削除されました。

建設業経理事務士の取り扱いについて

 経営事項審査の項目の「建設業経理事務士等の数」は、1級及び2級が評価対象とされ、平成10年度まで暫定的措置として3級も評価対象とされていましたが、3級建設業経理事務士の評価期間が延長されて平成15年度までとなりました。

記載方法の改定について

1.事業税の記載方法の改正

 損益計算書のうち販売費及び一般管理費の「租税公課」勘定に計上していた事業税を「法人税及び住民税」に含め、「法人税、住民税及び事業税」として表示する。これにより従来と比較して、営業利益・経常利益が事業税相当分だけ多く表示されることになります。
 また、事業税の未払い分を貸借対照表の「未払法人税等」に含めて表示することになりました。

2.労務外注費の記載

 完成工事原価報告書の「労務費」の内訳として、「労務外注費」を追加することになりました。

 この他、建設業者が財務諸表の作成で税効果会計を採用した場合のために、それらに関連する勘定科目が追加されました。ただし、一般の中小企業にとっては当面必要ないものと思われます。